2018年になって早くも1週間が経過しました。つい先日「あけましておめでとうございます」と挨拶し合っていたばかりなのに、年月の流れは驚くほど早いものです。皆様、正月ボケになっていないでしょうか?
さて、昨年の2017年は仮想通貨業界にとって非常に大きな進歩を見せた一年でした。1BTC/JPYのレートが10万円前後だった1月からスタートし、12月までの間に一時220万円を突破するほどの高値に到達。その後は利益確定売りに加え、ハッキングやインサイダー取引疑惑など様々な不祥事の話題が嫌気されて30%近い大暴落が発生したものの、140~150万円台でしっかり下げ止まり反発。依然として買い意欲の強さが見て取れます。
はたして、2018年の仮想通貨相場はどのような展開を見せるのでしょうか?社会情勢やテクニカル分析を検証し、様々な観点から今年の仮想通貨市場を予想してみました。
仮想通貨取引に携わっていると、多くの人は自分の「願望」を優先した甘い予測を立ててしまいがちです。ここでは、徹底して中立の立場でポジ要素とネガ要素の両方を検証していきます。あくまで一トレーダーとしての個人的な意見ですが、参考程度にお読みいただければ幸いです。
仮想通貨を巡る世界の政治・金融情勢を検証
仮想通貨はまだまだ発展途上の分野であり、様々な要因が大きな値動きを引き起こします。したがって未来を予想するためには、過去そして現在進行中の出来事を正確に知る必要があります。2017年から2018年1月までの特筆すべき仮想通貨事情をまとめておきましょう。
仮想通貨取扱事業者の登録制
2017年4月に施行された改正資金決済法により、仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行う事業者には仮想通貨交換業の登録が義務付けられるようになりました。
金融庁が法整備に動いたことで、詐欺のイメージが強かった仮想通貨取引の信頼性が大幅に向上。市場に参入する投資家も増え、それまで10万円台を推移していたBTC/JPYが一気に30万円台を目指すきっかけとなりました。
ただし、勘違いしている方が多いですが、改正資金決済法で仮想通貨取扱事業者の健全性が保たれているとはいえ、仮想通貨自体はまだ法的に通貨として認められているわけではありません。税制面でも、株式取引・国内FXと仮想通貨取引では以下のような扱いの違いが存在します。
株式取引・国内FXの利益にかかる税金
- 分離課税が適用される。
- 最大3年間の損失の繰越控除が可能。
- 利益に対して一律20.315%課税される。
仮想通貨取引の利益にかかる税金
- 総合課税の雑所得扱い。
- 翌年度以降の損失の繰越控除が出来ない。
- 他の所得との損益通算も出来ない。
- 利益に対して最大45%課税される。
ご覧のとおり、株式取引や国内FXと比べて仮想通貨取引の扱いは厳しく、ビットコインで儲けたといって高笑いしていた人たちの大半は、これから多額の税金をふっかけられて涙を流すことになります。これでは仮想通貨取引で頑張るだけアホらしいと思う人が増えてしまいます。
投資の世界では、「期待」と「信用」こそが値上がりの原動力です。NISA口座の導入によって株式取引の節税が可能になったように、多くの投資家が気軽に参入できる環境を構築できるかどうかが一つの重要なポイント。今後仮想通貨全般に係る法整備がもっと進めば、仮想通貨の価格が上昇する要因となることでしょう。
また、大手金融機関が研究を進めているブロックチェーン技術により、既存の法定通貨と仮想通貨をミックスさせた新型のデジタル通貨がリリースされる展開にも期待です。あまりにもボラティリティの大きい仮想通貨は、やはり通貨としてあまりにも不安定な存在。単なる投機商品ではないデジタル通貨が普及すれば、仮想通貨に対するネガティブなイメージが払拭されるはずです。
ハードフォークの乱立
2017年8月頃、ビットコインの取引量増大によりデータ処理が著しく遅延してしまう「スケーラビリティ問題」に対応するため、取引データを圧縮して対応するSegwitが導入されました。その結果、ビットコインのスケーラビリティ問題が改善され、価格を押し上げる材料となりました。
しかし、時を同じくしてSegwit導入に反対していたビッグブロック派がハードフォークを敢行。ブロックサイズの上限を8メガバイトにまで拡張した「ビットコインキャッシュ」が2017年8月に誕生しました。それ以後、「ビットコインゴールド」や「ビットコインダイヤモンド」など様々な新仮想通貨が誕生する切っ掛けとなりました。
今でこそハードフォークによる新仮想通貨誕生は当たり前になりましたが、当時はビットコインが取引停止になるのではとの思惑から売りが進み、20万円割れ寸前まで価格が下落したものです。
今日スタートしたSegwit2Xハードフォークはインチキなのか?いまさら聞けない仮想通貨の「ハードフォーク」を徹底解説!
既存の仮想通貨を所有していれば無料で新規仮想通貨を貰えるため、本来であればハードフォークはビットコインの買い材料です。ところが最近では詐欺まがいのハードフォークニュースが登場するようになり、仮想通貨業界の信頼性が大きく揺らいでいます。
オープンソースのソフトウェアだけに、その気になれば誰でも参入できるのが仮想通貨のメリット。それは同時に、相場操縦の悪用も簡単に出来るという危険性の裏返しでもあります。投資家もそれが分かっているため、最近ではハードフォークのニュースが流れてもいまいち相場が反応しなくなりつつあります。
仮想通貨業界への各国政府の対応
中国
2017年9月頃、50万円台を推移していたBTC/JPYが30万円割れ寸前まで低迷しました。これは、中国金融監督当局が国内の大手仮想通貨取引所を閉鎖するというニュースが流れたためでした。
当時、ビットコイン取引の8割以上は人民元によるものであり、紛れもなく中国は仮想通貨取引の中心的存在でした。しかし、人民元の流出を懸念し、ICOを違法と判断した政府によって仮想通貨取引そのものが規制されていき、皮肉にも日本の投資家が仮想通貨取引において世界トップクラスのシェアを占める切っ掛けとなりました。
中国国内ではいまだに仮想通貨取引が禁止されているため、OKcoinの元共同創業者である中国人事業家のチャオ・チャンコン氏によって創設された香港の仮想通貨取引所・Binance(バイナンス)は、今後本格的に日本進出を検討しているとのこと。
このままでは空前のビジネスチャンスを日本に奪われてしまうとの焦りがあるのか、中国政府は将来的に仮想通貨取引禁止を制限つきで解除し、「クリプト元」なる自国の仮想通貨を発行するのではとの噂もあります。もしも13億もの人口を擁する中国が再び仮想通貨市場に本格参入すれば、さらに大きな上昇トレンドが発生する可能性に期待できます。
韓国
トレーダーの人数的には中国や日本に引けを取るものの、比率的には世界トップクラスの仮想通貨熱狂国ではないかと言われているのが韓国です。世界の仮想通貨取引所におけるビットコイン取引の約20%が韓国ウォンであり、「ビットコインを買えば簡単に大金持ちになれる」との思惑から仮想通貨取引にのめり込む若者が急増傾向にあります。
しかし、2017年12月19日に韓国の大手仮想通貨取引所・ユービットが、北朝鮮からのハッキングによって総資産の約17%、実に100億円近くを盗まれ、破産申請に追いやられるというショッキングな事件が起こりました。
この事件を切っ掛けに、韓国政府は仮想通貨取引の規制強化を開始。すでにICOは禁止されていますが、さらに特別委員会を組閣して仮想通貨業界の監視体制を構築しています。仮想通貨取引に必要な仮想口座の新規発行も暫定的に禁止。実名を確認した上で入出金を行えるシステムが銀行に導入されるまで、仮想通貨取引市場への新規参入がストップされる見通しです。
もしも今後韓国で仮想通貨取引そのものが禁止されてしまったら、日本人にとっては心強い戦友を失うようなもの。出来高が大きく下落し、仮想通貨レートの低迷につながることでしょう。
ロシア
取引所を閉鎖するなど仮想通貨に対して非常に否定的だったロシアですが、最近ではその姿勢に軟化が見られます。
現在ロシアは、仮想通貨やICO規制の枠組みを明文化した「仮想通貨法案」を企図中。ICOによる調達資金の最高限度枠や一般投資家の投資限度額、さらには仮想通貨のマイニングに課税することなどを規定した法案が3月末までに施行される見通しです。
全面的に禁止するのではなく、投資家の保護を十分に確保したうえで仮想通貨を投資資産として活用する。この前向きなコンセプトは業界関係者から大いに賛同されており、プーチン大統領の辣腕ぶりが見て取れます。
また、ロシアは法定通貨ルーブルと手数料無しで交換できる自国仮想通貨「クリプト・ルーブル」の発行も検討中とのこと。あくまで国家が管理し、第三者がマイニング出来ない独自の仮想通貨システムを導入すれば、ブロックチェーンを活用してルーブルの状況を把握したりマネーロンダリングを防止できたりするメリットがあるからです。
同時に、国際社会から孤立傾向にあるロシアにとって、基軸通貨ドルとアメリカの金融システムに頼らない決済手段の確立は生命線。仮想通貨によって対ロシアの経済制裁を回避できるという目論みもあるようです。
これまで仮想通貨市場から距離を置いていたロシアが相場に参入すれば、新たな勢力となることでしょう。しかし、社会主義国家の行動は非常に読みづらいため、ロシア当局の動向は要警戒です。
ビットコイン先物上場
2017年11月~12月頃にビットコインの価格が急騰した理由の一つとして、「ビットコイン先物取引」の承認が挙げられます。
日本時間2017年12月11日にシカゴ・オプション取引所(CBOE:Chicago Broad Options Exchange)で、翌週12月18日にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME:Chicago Mercantile Exchange)でビットコイン先物が上場。アクセス過多により一時サイトが不安定になるほどの関心を集めました。
それまでは「得体のしれない怪しい存在」という負のイメージが強かったビットコインが世界トップクラスの規模を誇る大手先物取引所で取り扱われるようになり、仮想通貨への期待度が大幅に向上。BTC/JPYが一気に200万円超えを果たすきっかけとなりました。
正確な時期は未定ですが、2018年中にCantor Fitzgerald & Co.およびナスダック証券取引所でもビットコイン先物が取り扱われる予定です。ニューヨーク証券取引所では、ビットコイン先物価格に連動したETFの審査が複数行われています。
そして現在日本でもビットコイン先物取引の計画が進行中。東京金融取引所の関係者らが仮想通貨の先物上場に関する研究会を設置し、2月頃から本格的に仮想通貨をどのように扱うべきか議論を交わす予定です。
もしも仮想通貨が正式に金融商品として認められれば、東証でもビットコインの先物取引が可能となる見込み。今後の展開が非常に注目されており、その動向次第では仮想通貨の価格に大きな影響を与える可能性があります。
しかし、仮想通貨の先物が承認されたからといって、それが必ずしも長期的な価格上昇要因になるとは限りません。
海外のビットコイン先物取引は当初予想されていたほど出来高が伸びておらず、むしろ熱狂的に買いを煽っている個人投資家とは対照的に、最近では多くの機関投資家が冷静に下落を見越した売りを仕掛けています。
先物取引には買いだけでなく売りから入ることも出来るという特徴があります。数百億規模の巨額の資金を動かせるプロのトレーダーが一気に空売りを仕掛ければ、これまでとは比べものにならないほどの相場変動が発生することは必至。しかも仮想通貨市場にはストップ安などのセーフティールールが存在しないため、トレンドに乗り遅れたトレーダーの間に大パニックが起きることでしょう。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図です。
実際、ビットコインのレートも先物上場の時期をピークに30%近い大暴落が発生。まさに、「噂で買って事実で売る」という相場の格言通りの値動きを見せました。
東証で仮想通貨の先物取引が承認されれば短期的に値上がりはするでしょうが、安易に高値を追うと後が怖そうです。
もちろん、全ての機関投資家がビットコインを懐疑的に見ているわけではありません。Paypal 創業者であるアメリカの起業家ピーター・ティール氏は自らのベンチャーキャピタルファンドで数億ドル規模のビットコインを購入していますし、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏も仮想通貨ビジネスに対して非常に意欲的です。
値上がりすると予想する勢力と値下がりすると予想する勢力、はたしてどちらの勢いが勝るのか、それは全て市場が決めることです。
テクニカル分析で考察
BTC/JPYのチャートを使って、値動きをテクニカル的に予想してみましょう。
日足チャートを見てみると、2017年11月頃から大きく膨らんできたボリンジャーバンドが収縮してきていることが分かります。これは、トレンド相場からレンジ相場に移行している状態を表しています。20日移動平均線も上向きから下向きに反転。底堅く推移してはいますが、上値も重い状況が続きそうです。
週足チャートを見てみると、+1σ~+2σ付近で膠着していることが分かります。目先は、150万を下値に200万辺りが上値として意識されそう。しかし、平均線との乖離が相変わらず非常に大きいため、ビットコインの悪材料が出て一気に売りが進むようなら週足12日EMAの140万円付近、日足-3σの120万円付近、あるいは週足20日SMAの100万円辺りまでの下落を警戒した方が良さそうです。
また、非科学的だと怒られるかもしれませんが、時には相場をアノマリー(経験則)的に考察してみることも大切です。例えばアメリカでは、”Sell in May”といって5月の株価は上がりにくいというアノマリーが知られています。これといった明確な根拠は無くてもなんとなく当たりやすい通説は、取引の指針として意外と重宝します。
2018年は干支で言うと「戌年」にあたります。昨年の2017年は「飛翔」をつかさどる酉年であり、まさに仮想通貨業界にとって大きな飛躍となった一年を象徴していました。
戌年は干支の占いでは収穫を終えてひと息つく時期を表しています。飼い犬が忠実に家の前で番をするように、堅実に守りに入る一年。それはリスクヘッジを示唆しており、これまで一方的に跳ね上がってきたビットコインの価格が投資家の様子見によって落ち着いてくるのではというイメージが湧いてきます。
信じるか信じないかは、あなた次第です。(笑)
まとめ
ポジ要素
- ビットコイン先物を扱う取引所の増加、ビットコインETFへの期待
- Binance(バイナンス)の日本進出
- FacebookのCEOのザッカーバーグ氏などの事業家が仮想通貨ビジネスに意欲
ネガ要素
- ハッキングに対する不安、韓国の仮想通貨規制強化
- 高値圏を警戒して買いを控える動きが強まっている
- 送金処理遅延や手数料高騰等の問題により、決済ツールとして見限る人々が増えてきている
2017年のビットコイン価格は、誰もが予想できなかったほど目覚ましい上昇を見せました。しかし2018年に同じような高騰が連続して起きるかと言われると、現時点ではなかなか難しいような印象を受けます。とはいえ、よほどのことが無い限り仮想通貨ブームがいきなり終焉するとも考えにくく、100万~300万円程度のレンジに落ち着くのではないかと予想します。
たとえ大きな値上がりが無くても、小幅なレンジで利益確定を繰り返していけば儲けを出すことは十分に可能です。ボクシングに例えれば、右ストレートで一発KOを狙うのではなく、左ジャブを細かく刻んで着実にポイントを稼いでいく戦法が有効になりそうです。
ちなみに、仮想通貨業界全体でみると、ビットコインの市場占有率は年々下落傾向にあります。新しい仮想通貨の誕生に伴い、今やビットコインの市場占有率は30%台にまで低迷。将来的にトレーダーの投資金は、アルトコインの方に移っていく可能性が極めて高いです。
出典:Global Charts
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