2017年に入って、世界的に仮想通貨の市場が急激に伸びてきています。
仮想通貨はこれまでの「通貨」の常識を覆し、実物(貨幣など)のないオンライン上だけの存在であり、中央銀行といったコントロールする者もいない自由な通貨になります。
主要な銘柄は仮想通貨の代名詞ともなるビットコインで、そのほかイーサリアムなどのマイナーな仮想通貨がざっと数百種類はあるとされています。
そして、主要になるそのビットコインの最大の市場は中国で、実に23%のビットコインが中国国内で取引されているとされています。
そんな中国政府がある行動を起こしました。2017年9月5日付の日本経済新聞の記事を参照にすると下記のような出だしになります。
引用:日経新聞
仮想通貨の市場が世界的に伸びている中、中国政府はなぜ日本経済新聞が報道したようなICOを全面禁止にしたのでしょうか。
そして、それが世界の仮想通貨市場にどういった影響を与えるのでしょうか。
まずは仮想通貨業界におけるICOとはなにかを知っておこう!
中国のICO全面禁止の発表を紐解く前に、そもそもICOとはなにかご存知でしょうか。
すでにビットコインなどを保有し、仮想通貨を投機のひとつとして捉えている方はご存知かと思いますが、一般的な人にとってはICOがなんだかわからないという人もいるかと思います。
そこで、ここでは中国政府による中国国内のICO全面禁止を見てみる前に、ICOがどんなものなのかを解説します。ICOの意味がわかれば、このニュースがどんなことを意味するのかがわかってくるかと思います。
中国政府が目をつけて規制したICOとはいったいなんのこと?
まず、ICOは「Initial Coin Offering」の頭文字を取ったもので、「クラウドセール(Crowd Sale)」や、「プレセール(Pre Sale)」、さらには「トークンオークション(Token Auction)」とも呼ばれます。
簡単に言えば、新しい仮想通貨を開発したい人やグループがその開発資金を集めるための行動になります。資金を集め、その代わりに開発が済み、新仮想通貨がリリースされる際には投資家に新仮想通貨を分配します、といったものです。
株式投資でいうIPO(Initial Public Offering)に非常に似ていて、最も安く仮想通貨を手に入れる方法のひとつであるといえます。
ただ、完全にIPOなのかというとそうでもなく、近年、インターネットやSNSなどで資金を集めるクラウドファンディングにより似ているといえるかもしれません。
ただ、現金で資金を集めるよりは、仮想通貨の開発者らしくICOは多くで仮想通貨を使って資金集めが行われています。
その際によく利用されるのがマイナーコイン(アルトコインと仮想通貨業界では呼びますが)のグループではトップの流通量を誇るイーサリアムです。
中国政府にとってのICOとはいったいどんな存在なのだろうか
そんなICOは仮想通貨市場が世界的に大きくなってしまっている中国にとってはある意味では脅威でもあります。
自国の通貨が信用されず、外貨を含めて中国国内の通貨が仮想通貨市場に流出してしまうのです。実際にその流れはコントロールできる状態ではなくなっていることもICO全面禁止の流れに繋がったのではないでしょうか。
また、それだけ仮想通貨が注目される中で、自身で新しい仮想通貨を創り出して儲けようという人も出てくるわけです。
実際に中国国内では2017年上半期だけで実に3億8300万ドルがICOに集まったとも報じられています。
それだけ市場規模が大きいので、中国政府としても今のうちに対策を練り、そのための時間を稼ぐのにICOを全面禁止にしたのではないでしょうか。
2017年9月4日、中国国内でICOが全面禁止になった!
中国政府がICOを全面禁止にしたのは、前章でも書いた市場がコントロールできないほどの勢いで拡大していることもありますが、当然ながら中国政府がICOを問題視していることも大きな理由になります。
中国の開発者や企業がICOに乗り出せば、外貨流出の可能性もありますが、逆に外貨を獲得する可能性も本来はあるはずです。
ですが、中国政府はそうではなく、あくまでもICOが大きな問題、欠陥を抱えていると考えているのです。だからこそ、中国国内のICOを全面禁止にしたわけです。
では、中国はなぜICOを全面禁止にしたのでしょうか。
なぜ中国でICOが全面禁止になったのか、その真相とは?
中国がICOを全面的に禁止したのは、まず根本的に仮想通貨とICOをよく理解している人ばかりではないという前提もあったのではないでしょうか。
中国人はお金儲けに貪欲な人種です。そのため、仮想通貨にも早い段階で飛びつき、そして世界的にも大きな市場になっているわけです。
2017年に入ってビットコインが高騰し、より仮想通貨への投資熱が上がってきています。
ですが、高騰している中では手を出しにくいこともあり、マイナーな仮想通貨などまだ価格が安いものを買い漁る投資家も出てきているわけです。ビットコインのようにマイナーなうちに手に入れておき、高騰したら売ろうと考える人もいるでしょう。
そんなときに一番安く仮想通貨を手に入れるのは開発前の原価のものを手に入れることです。そのため、中国の投資家は我先にとICOがあれば飛びついていったのです。
ICOはそんな欲望とブームにうまくつけいることで、さらに悪い方向へと進んでいた可能性があります。中国政府はそこに大きな懸念を示したともいえます。
ICOには政府や法令で定められた正式な枠組みがなかったから?
前章でICOを説明する際に、株式のIPOにも似ていると書きました。
ですが、IPOはしっかりと法律などで定められ、しっかりとした枠組みがあって投資家は安心して投資できるようになっています。しかしICOはこの枠組みがありません。
そもそも仮想通貨が世界的に認識されるようになったのはここ数年の話です。国によっては仮想通貨を一切認めていませんし、規制を強くしている場合もあります。完全に野放しにしている国だってあるでしょう。仮想通貨はまだそんなレベルなのです。ICOの国際的なルールはもちろん、各国でしっかりとした枠組みを決めていないことも多々あります。
逆に言えば、それだけ自由なのが仮想通貨で、政府などに縛られないというビットコインの理念からすれば仮想通貨の本来あるべき姿ではあります。ですが、先ほどのように、仮想通貨を欲する人たちの上がりすぎた熱が盲目にさせてしまい、頭のいい人たちはそれを利用してICOでやりたい放題にしていると考えられるのです。
ICOが中国の金融関係の委員会に金融詐欺やねずみ講と非難された?
中国には中国人民銀行を筆頭とした省庁を横断する委員会があるそうで、この委員会は以前からICOは金融詐欺やネズミ講の一種だと警告していたようです。盲目に安い仮想通貨を求め、ビットコインの2番手3番手となることを夢見る人たちから資産を巻き上げる悪事に利用され、しかもそれを罰することもできない状態だったわけです。
仮想通貨は理念こそ簡単ですが、実際に運営したり開発するのは難しいものです。ですので、世界中でICOが行われ、実際に新しい仮想通貨は誕生もしています。
ただ、その裏では何年経ってもいまだ開発中のものもたくさんあります。実際に新銘柄がリリースされるということは茨の道であって、そうめったにないことなのです。
ですので、いくらでも言い逃れができ、悪徳企業や開発者はICOで資金調達を投資家にお願いしながら、その裏では開発はしていないということも考えられ、中国政府はそれを問題視しているわけなのです。
中国ICOの規制がビットコインや仮想通貨へ与える影響は?
では、中国政府による仮想通貨のICO全面禁止は、すでにリリースされているビットコインやその他の仮想通貨にどういった影響を与えるのでしょうか。
投資家としてはそのあたりは非常に気になるところなのではないでしょうか。ICOの全面禁止により、中国国内の仮想通貨熱に少し水を差すことになっているわけです。しかも、中国の市場は世界規模で大きいわけですから、なんらかしらの影響はあり得ると考える投資家が多いようです。それは正しいことなのでしょうか。
中国でICOが全面的に禁止になったことで仮想通貨に与える影響はどうなのか?
まず、中国政府は今後ICOに流出した外貨やチャイナマネーを逐一チェックし、問題があれば口座凍結することも視野に入れているようです。
そうなれば、これまでの投資分にも影響があり、多くの投資家が痛い目に遭う可能性もあります。そうなれば、現行の仮想通貨市場にもなんらかしらの打撃を与えることは必至と考えるのは当然でしょう。
ただ、一方の立場で見るとすれば、ICOで資金だけ集め、実体のない詐欺集団のような案件もあるわけですから、規制することでそれらは今後は排除されていくわけです。
そうなると、仮想通貨の市場全体で見れば、とても好ましい状況が作られるということになります。安心して仮想通貨に投資でき、なにかあっても政府や法が守ってくれるという環境ができあがります。
そう考えると、ビットコインや現行のマイナーな仮想通貨に与える影響というのは一時的なのではないかとも考えられるのです。
ICO禁止は一時的な影響で、むしろ現行の仮想通貨の取引停止の方が怖い!
中国におけるICO全面禁止は短期的には市場に影響を与え、仮想通貨全体の価格変動になにかトラブルを起こす可能性はあります。
ですが、それは一時的であり、ICOに対して法整備されるなどがあれば、今後はより健全な市場になるかと思われます。そもそも、ICOの規制はアメリカやシンガポールではすでに行われていることです。ですので、中国の今回の対応は、仮想通貨業界においてはあまり驚くべきことでもありません。
問題は、各国で仮想通貨に対する考え方や法整備がまったく違っており、中国もこのICO全面禁止のニュースののちに、現行の仮想通貨の取引も全面的に禁止するという報道もされています。
そちらの方がICO全面禁止よりもより大きなインパクトを市場に与えることでしょう。
仮想通貨自体がまだまだ目新しい存在です。日本の投資家も日本の仮想通貨の市場だけでなく世界中の市場動向をよく観察し、随時対応を考えていくべきではないでしょうか。