2018年2月8日の仮想通貨相場は、ここ数日の急落から持ち直す堅調な値動きを見せています。BTC/JPY(ビットコイン/円)は80万円台後半を推移。アルトコインも安定した値動きに終始しています。
昨晩の米上院銀行住宅都市問題委員会の公聴会にて、米証券取引委員会(SEC)のジェイ・クレイトン委員長と米商品先物取引委員会(CFTC)のJ・クリストファー・ジャンカルロ委員長らが仮想通貨市場を評価し、テザー社の問題に触れられなかったことが投資家の安心感に繋がったようです。
はたしてこのまま底打ちし、上昇トレンドに再帰するのでしょうか?チャートや経済ニュースを参照しながら、今後想定される値動きのパターンを予想してみましょう。
ポジトーク:上昇トレンドに反転する可能性
BTC/JPY(ビットコイン/円)の日足チャートを見てみると、下落トレンドの傾向がはっきりと表れています。値上がりしているといっても急落からの自律反発の域を出ておらず、—1σ付近で跳ね返される展開が続いています。今のところ堅調ですが、このままレジスタンスラインとして意識されている—1σを完全に抜けるまで上昇トレンドに転換したと言い切るには早いように思われます。
一方、BTC/JPY(ビットコイン/円)の週足チャートを見てみると、5本連続で陰線が出ています。呆れるほど見事なまでの暴落っぷりですが、その各々に下ヒゲが出ており、いわゆる「カラカサ」と呼ばれるローソク足が出現しているのがわかります。
カラカサは始値から大きく値を下げて安値をつけた後に反発して値を戻している状態を表しており、市場参加者の買い意欲の強さを表しています。ビットコインはまだ値上がりすると信じている個人投資家が多く存在しているということです。
そして注目すべきは、1月28日の週に出現した大陰線の次にカラカサが出ているという点。大陰線を出した後にカラカサが出るチャートパターンを「たくり線」と呼び、押し目や戻りのポイントとして意識され、上昇トレンドに転換する可能性の高いサインと言われています。
ストキャスティクスも20を下回り、売られすぎのサインが出ています。まだ今週の取引が終わったわけではないので早合点は禁物ですが、このまま70~100万円あたりで下げ止まってくれれば反発する展開も見えてくるでしょう。
そのために重要なのが、テザー社の調査報告です。現在、米商品先物取引委員会(CFTC)がテザー社のビットコイン市場操作疑惑の問題を詳細に調査しており、その経過報告が近い将来発表される見通しです。
米ドルの準備金を担保に発行されていたTether(テザー:USDT)は、仮想通貨の資産価値の裏付けとされていた重要なデジタル法定通貨。テザー社がUSDTを不正に水増しし、グループ会社のビットフィネックスと結託してビットコインの価格を不正に吊り上げていたという疑惑が本当ならば、これは間違いなく仮想通貨業界の信頼性を揺るがす大問題です。
しかし、テザー社の米ドル準備金履歴に不備がなく、この疑惑を告発する匿名のレポートが単なるFUD(デマを流して大衆を不安にさせ、他者の思考パターンをコントロールする詐欺の手口)だったことが米商品先物取引委員会(CFTC)によって証明されれば、弱気になっていた投資家心理は一転して回復。怒涛の買いが入って一気に価格が跳ね上がることでしょう。
ネガティブニュースばかりが続いて投資家心理が抑圧されている時ほど、開放されたときのパワーは絶大です。20日移動平均線の120万円付近まで急上昇する可能性は十分にあるでしょう。
ネガトーク:下落トレンドが継続する可能性
人間はどうしても物事を主観的にとらえてしまいます。買いポジションを持っているトレーダーは盲目的に値上がりを信じ、「ネガティブニュースを流している連中は売りを煽っているFUDだ!」と敵視してしまいがちです。
しかし、相場で勝ちたかったら自分の理想ばかりを追い求めるのではなく、市場の「現実」を直視することが最も大切です。視野が狭くなった状態では冷静な思考ができず、利益確定や損切りのタイミングを逸して大怪我をしてしまう恐れがあります。あくまで中立の立場で客観的に市場を観察する意識を持つことが肝心です。
正直なところ、現在の仮想通貨相場には逆風が吹き荒れています。
日本国内の仮想通貨取引所・コインチェックが約580億円分のXEM(ネム)の不正流出を許してしまった問題で、同社のずさんなセキリティ体制が明らかになり、仮想通貨業界全体の信用性が大きく落ちてしまいました。
経営陣が発表した総額約460億円分の返金補償も日程が不明瞭のまま。当初は13日までに実現するとみられていた業務再開の時期もずれ込む可能性があります。
コインチェックの問題は米上院銀行住宅都市問題委員会の公聴会でも、仮想通貨のセキュリティーリスクとして取り上げられました。業界全体のハッキング対策が整うまで、この問題は投資家心理を重くしそうです。
そしてくだんのテザー社の調査報告で、万一テザー社が本当にビットコインの相場操縦を行っていたということが証明されたら、ビットコインのさらなる下落要因になり得ます。この問題はどちらに振れるか予想が難しく、当日の発表を待つしかありません。「事実」が確定するまで大幅な値上がりには期待しづらいでしょう。
まとめ
BTC/JPY(ビットコイン/円)は2017年12月に付けた最高値・220万円から2か月間で約150万円、およそ70%も暴落しており、短期的にはそろそろ反発が来てもおかしくないタイミングです。地合いが悪いとはいえ、依然として個人投資家からの人気は根強く、値上がり余地はあるとみています。
個人的に怖いのは、ビットコイン人気が低迷して価格が「デッドライン」に到達してしまうことです。
一般的な金融資産の場合、価格が値下がりすれば買いやすくなるため、押し目狙いの投資家から喜ばれます。しかし、仮想通貨であるビットコインにはそうも言っていられない別の事情が存在します。
仮想通貨の運用には、ブロックチェーン上で生成されたブロックを承認するマイニングという作業が欠かせません。PoW(プルーフ・オブ・ワーク)システムのビットコインでは、マイナーがコンピュータをフル稼働させて演算処理を行っており、最初に作業を完了したマイナーに所定の報酬(ビットコイン)が支払われます。
その報酬目当てでマイニング事業に参入した企業が世界中に存在していますが、このままビットコインの価格が低迷していくと採算が取れなくなり、マイニング事業からの撤退を余儀なくされてしまいます。
そのデッドラインは、およそ30万円前後。それ以上の安値が長期間続くとマイナー不足に陥って、世界的に普及したビットコインのシステムが破綻してしまう恐れがあります。これは安く買えるという次元の話ではなく、ビットコインの存続そのものが危ぶまれる問題です。
実際、マイニング事業者の中には自社でマイニングを行うことを断念し、個人ユーザー向けのマイニングパーツの販売に路線転換しているところが増えてきています。
よほど電気代の安いところでなければ、50万円台でも経営が苦しいのが実情。「理論」と「現実」のギャップが思わぬ形で表れてきてしまいました。ビットコインが生き残るためにも、何とかここらで踏みとどまってほしいものです。